子供を仕事に連れて行きたいんです。特に取材の仕事に。理由は5つあります。
1. 大学を出てから社会を知るのでは無駄が多い
1つめの理由は、広く世の中を見せたいから。ただ学校と家を往復して、たまにレジャーに出るだけでは、社会を学べないんです。学生になってバイトをしても、その程度ではほとんど意味がない。
これは僕自身の経験からきています。もっと早くから、世の中ってどういうものなのかを知っていれば、20代をもっと有効に使えただろうと思います。親に恨みつらみはありませんし、20代を後悔もしていませんけど、もし学生時代に社会の仕組みを理解できていたら、可能性が遙かに広がっていたのは間違いありません。
ふつうは、大学を出てから、身をもって社会を学び始めます。でも、社会の仕組みを学ぶのって、別に3歳から始めたってなんの問題もないですよね。
最初は、親の傘の下からちょっと覗くくらいでいいんです。小学生や中学生になったら、失敗が許される環境のもと、自分の手で何かをやってみる。徐々にステップアップして、20歳になったら、もう自分がやりたい活動を自由にやれるようになっているのが個人的な理想です。
世の中にはいろいろな人がいて、小さな無数の事象が絡み合って社会は動いていて、自分も自分なりのやり方で社会の中に入っていけるんだという事実を、子供たちには知ってほしいなと思います。人生の最高の楽しみって、学校を卒業してから始まるんです。誰かの庇護から卒業して、自分の手で社会を泳ぐようになってからが本番なんです。
2. “嫌だけど我慢して働く”でなく“価値を提供する”が仕事だと知ってほしい
2つめの理由は、仕事ってどういうことなのかを実感してほしいから。
特にサラリーマン家庭の場合、子供は、ただ疲れて家に帰ってくる親の顔しか知りません。どんな仕事をしているのか見たり、その仕事が社会をどう動かしているのか知ったりする機会がないのが一般的なはずです。普通に生活して学校を卒業して、いざ就職するとなったときにネガティブな気持ちにしかなれないのは、
仕事=よくわからないけど大変で、毎日疲れて、嫌だけど生活するためにやらなくちゃいけないもの
という認識になるケースが多いからです。マイナスの一面だけで仕事を理解するのは、不幸でしかないと僕は思うんです。毎日疲れて帰ってくる仕事でも、達成感はあるのかもしれないし、世の中を大きく動かしているのかもしれない。
また、企業の社員として働くだけが仕事ではないとも知ってほしい。価値を提供でき、価値をお金に換える方法を知っていれば、どこからでもお金は稼げるんです。「嫌だけど我慢して働く」が仕事ではないんです。
世の中には、個性的な活動をしている人が山ほどいます。僕の仕事の半分は、個性的な彼らを取材して、広くステークホルダーと繋げ、新たな価値を生み出すことだと思っています。都内、被災地、地方……個性的な彼らを取材するときは、どこへだって子供たちを連れていきたいと思っています。
たとえば、子供たちがもう少し大きくなって、「小学校へ行きたくない」と言い出したら、僕は喜んで全国各地へ引っ張り回すつもりでいます。僕自身の仕事を見せるのもそうですし、世の中の多様な仕事のあり方を見せたいと思っています。
3. いろいろな人に会うことに慣れてほしい
「これはいい機会かもしれない」「チャンスかもしれない」と感じたときに、躊躇なくコミュニティに入っていける人になってほしいと思います。
僕自身、それほど人付き合いの良いほうではないのですが、それとは別に、おもしろそうな場所へポンポン飛び込んでいくフットワークの軽さがあります。体感してみなければわからないことって多いと思うからです。期待外れだったら遠ざかればいいだけです。
不安で一歩を踏み出せないとか、そもそも人と会う行動を特別に感じるようだと、多くの可能性を失います。日常的に多くの人に触れる経験をさせてあげたいと考えています。もっとも、これは親の勝手な希望ではあるのですが。
4. 他人とは違う経験をさせたい
つくづく子育ては、「いかに他人と違う体験をさせられるか」なんだと実感しています。型にはまらず個性的な活動をしている学生や若者は、話を聞くと、ことごとく一般的とは言い難い環境で育ってきているからです。
両親がともに起業家だった。子供の頃から大人とゴルフに行っていた。学校に行かなくても誰も文句を言わなかった。などなど。
一般的に必要とされるスキルを、ある程度の水準で習得すれば、確かに就職はしやすいかもしれません。でも、そんなどこにでもあるスキルは、いくらでも交換できます。
これからの時代に強味になるのは、ちょっとこういう人材はいないよね、と認識してもらえるような個性です。なぜなら、「人と違う」という強味さえあれば、いくらでも価値を生み出せるからです。雇用されるにしろ、自営するにしろ、必ず武器になります。
5. 単純に楽しい
最後の理由は、子供と一緒だと、単純に僕が楽しいからです。
先日はじめて、取材に4歳の娘を連れていきました。
7つのテーマが羽ばたく!『子ども達にいい社会をつくるためのChild Future Session vol.4』レポート | FutureCenterNEWS JAPAN
好きでやっている仕事にもかかわらず、でもやっぱり5倍くらい楽しい実感がありました。
ちなみに、Child Future Sessionに集った人たちは、もちろん、こどもに理解のある人ばかりです。するとおもしろいことに、娘ほか数人の子供たちは、イベントの妨害も、仕事の邪魔もしませんでした。周囲を飛び回っても、ゲストスピーカーの椅子に座っても、なぜか付箋を配りはじめても、みんな笑って見ているだけで、誰も叱らなかったからです。
「この場に受け入れられている」とさえ感じれば、ちゃんと大人しくしているんです。正直、4歳ではまだ早いかな、という懸念がゼロではなかったんですけど、いい大人たちに恵まれたおかげで問題ありませんでした。
子連れ取材の一発目に、Child Future Sessionを選んで、本当に良かったです。これからもどんどん子供を連れて取材へ行くぞ、という思いを強くしました。